発電量という数字の「落とし穴」

発電量という数字の「落とし穴」 発電量とはそもそもなにか
■正確につかんでいる人は少ない
太陽光発電システムでは「発電量」という言葉をよく使う。
というよりも「発電量」こそが太陽電池の命と言ってもいい。しかし、この「発電量」の実態を正確につかんでいる人は意外に少ない。
次のような質問が来たとしよう。
「私の家に3kWシステムを設置したらどれだけ発電しますか?」
この質問に正確に、そして誠実に答えようとしたら、答えは「わかりません」としかいいようがない。
―えっ!?でもシミュレーションってものがあるでしょう?それをしたらわかるんじゃないですか?
―たしかにメーカーなどが出している様々なソフトがあり、必要なデータを入力すれば「ある程度」はわかります。しかし、それもあくまでシミュレーション。本当にそうなるかどうかはやってみないとわからない(苦笑)
発電量の定義
一体どれが正しい発電量なの?
太陽光発電システムを設置すると必ず発電量モニターというものが付く。これを見ていると非常におもしろい。
実際に設置された方は驚かれますが、このモニターの数字が刻々とめまぐるしく変化するのだ。
このように、ずっと同じ発電量を発電し続けることはけっしてない。
これでは、どの時点をもってこのモジュールの発電量とするのかもわからないし、このモジュールが実際どの程度の発電能力を持っているのかも判断できない。
では、この「発電量」とはいったいどの時点の数字をもって、「発電量」というのだろう?と素朴な疑問をもつ。
発電量という言葉の定義
このように、様々な条件で発電量が異なり、また時々刻々と変化するのでは、モジュールの性能を比較することもできない。 そこで研究者達はある一定の基準を決め、その基準のもとでの発電量をこのモジュールの発電量と決めることにした。
その基準とは、
【1】モジュール表面温度25℃、
【2】分光分布AM(エアマス)=1.5
【3】放射照度1000w/㎡
ちょっと難しいですか?(笑) 解説していきましょう。
まずは
【1】のモジュール表面温度について。
太陽電池の効率は温度によって変化する。温度が高くなると効率が落ち、逆に低温では効率がアップする。モジュールの性能を比較するのに温度による誤差が生じてはいけないので、モジュール表面温度25℃の時の性能を基準にすると決めたのだ。
【2】エアマス(Air Mass)とは聞きなれない言葉だが、太陽の光が地上に入射するまでに通過する大気の量をあらわす。
真上からの日射をAM(エアマス)=1とする。
朝日や夕日などのように入射角が低くなるとAM(エアマス)が大きくなり、赤い光が多くなる。これは短い波長の光が大気に吸収されてしまうからだ。
逆にAM(エアマス)が小さくなると青い光が強くなる。
太陽電池はその種類によって光の波長に対する感度が違うため、モジュールの発電量を評価測定するためにはこのAM(エアマス)を一定にする必要があるのだ。
ここで基準になっているAM(エアマス)=1.5という値は、光の通過距離が1.5倍になる、太陽高度42度に相当する。
【3】放射照度というのは光のエネルギーの強さと考えていい。
1㎡あたり1000wの光エネルギーが入ってくる状態を指している。
このように、基準になる光を照射した時にどれぐらい発電するかを、そのモジュールの「発電量」と決めているのだ。
モジュールの性能評価としての「発電量」を測定する場合、このような基準状態を自然の中で作り出すことは不可能だ。

そのため「ソーラーシミュレータ」という検査機器を用いて擬似的に基準となる太陽光を作り出し、その時の「発電量」を測定する。
だから、実際の場面では「発電量」どおり発電していることはほとんどない。規定の「発電量」よりも少ない場合もあるが、多い場合もあるのだ。
「発電量」と一言で言っているが、実態をつかむのはなかなかやっかいなシロモノなのだ。
太陽電池とりんごの関係!?「JIS表示」の盲点を知る
カタログの「公称最大出力」の数字はリンゴひと山いくらと同じ
例えば、メーカーのカタログに「公称最大出力100w」というモジュールが出ていたとしよう。そこで、あなたはこのモジュールを注文した。
さて何ワットのモジュールがあなたのもとに届くだろうか?
「なにを言ってるんですか?そりゃあ100wのモジュールに決まっているでしょう!」
そう思うのが普通ですよね・・・ ところが、実際は違うのである。
モジュールには一枚一枚発電量を示すシールが張ってある。
これを見ると・・・・
105wだったりするかもしれないし、103wだったりするかもしれない。
場合によっては95wかもしれない。
「えっ!?定格出力100wなのに95wのモジュールが出荷されてもいいんですか?」
じつはいいのである。
太陽電池の発電量とは上でも説明したようにもともとあいまいなもの。
そこで決められた一定の条件下での出力をそのモジュールの発電量としたわけだが、この発電量も「結果その発電量が出た」というにすぎない。
たとえばピッタリ100w出力するモジュールをつくるというのはほとんど不可能に近い。
そこでJISでは前述の基準状態、つまり、モジュール表面温度25℃、分光分布AM(エアマス)=1.5、放射照度1000w/áuの条件下での発電量が、公称最大出力の90%以上ならば出荷しても良いというルールにしたのだ。
これは、ある程度のばらつきはやむを得ないことを認めた上で、ばらつきの程度を「公称最大発電量のプラスマイナス10%」と決めた。
わかりやすく言えば、発電量90w以上なら「公称最大発電量100w」として出荷してもいいですよ、と決めたわけだ。(もちろん発電量110Wのモジュールを「公称最大発電量100W」として販売しても何ら問題はない)
ここでりんごの話
例えば「りんご」を10個、スーパーで買ってきたとしよう。
見た感じはだいたい同じ大きさのりんごが10個ある。
値段もすべて一個100円である。
しかし、家に帰ってきて厳密に重さを量ってみれば、全く同じりんごはないはずだ。それぞれが微妙に違う(だからといって文句をいう人もいないと思うが……)。
実は太陽電池にも全くおなじことが起こっている。
定格100wのモジュールといっても実際には一枚一枚違う出力のモジュールなのだ。
これは太陽電池の性質からしてやむをえないことなのだが、ただし、このルールを悪意で利用されると、たいへんなことになる。
極端な話、発電量90wのモジュールを30枚(つまり実質2.7kwのシステム)で、3kwとして販売することが可能だということだ。
3kwだと思って導入したシステムが実質2.7kwでも法律違反ではない、ということなのだ。
そこまで極端ではないにしても、公称最大発電量の95%で出荷するメーカーと100%で出荷するメーカー、105%で出荷するメーカーが出てくる可能性はある。
最近耳にする「どうも発電量が伸びない」といううわさはこの「JIS表記」の盲点をついている可能性もある。
各メーカーは1%・2%の発電量でしのぎを削っているが「表記」の部分で上下最大20%もの差があったのではせっかくの努力が単なる誤差になってしまう。
場合によっては「安く買った」と思ったシステムが、「実はそうでもない」ということが起こりうる、ということを知識として知っておくべきだろう。
それこそが「賢い消費者」というものだ。
太陽光発電システムは科学技術の粋を集めた最先端の製品、しかも何百万円もするシステムである。それが「りんご一山」と同じアバウトさを内に含んでいる。 太陽光発電システムはこういった「曖昧さ」を宿命として、持っているということを知った上でつきあっていかなければならない。
この太陽電池の本質を知った上で、「わが家でどれくらい発電するか知りたい」という方はぜひシミュレーションしてみてください。
発電マンではご希望の方に無料でシミュレーションをしております。
もちろんシミュレーションをしたからといって設置の義務はありませんし、強引な営業をすることもありませんのでご安心くださいね。